納棺とは亡くなった人を棺の中に納めることを言います。
納棺をする際には、身なりを整えて納めるのですが、それを儀式として行うことを「納棺の儀」といいます。
納棺の儀では、近親者が集まって一緒に旅支度をしたり、故人が愛用していたものを納めます。故人との時間と空間を共有できるかけがえのないひとときになるでしょう。
納棺の儀式が行われるタイミング
納棺の儀は、親戚が集まりやすい時間帯が選ばれます。一般的には通夜の前、一日葬の場合は葬儀・告別式の前に行われます。
納棺の儀に用意するもの

■死装束
納棺の儀に必要な葬具は宗教・宗派に沿ったものを葬儀社が準備します。進行や作法についても葬儀社が順をおって説明しますのでご安心ください。
仏式では、死装束という白い仏衣に着替えをします。死装束は死装束は浄土へ旅する僧侶をイメージしたもので、冥途への旅支度といわれています。
最近は仏衣ではなく、愛用していた服を着せたいという遺族も増えています。その場合、しきたりや慣習を重んじる人もいるでしょうから、周囲の理解を得ておくこと、死装束を着た後でも、その上から服を添えれば故人らしい姿でお別れすることができます。
■副葬品
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納棺の際、故人の愛用品などを棺の中に納めることができます。入れても良いものと入れてはいけないものがあります。
<入れてはいけないもの>
✖眼鏡、結婚指輪、腕時計など
金属製品やガラス製品など家庭ごみで不燃物に分別されるものは入れることができません。
✖紙幣・硬貨
昔は三途の川の渡し賃として硬貨と共に土葬された時代もありましたが、そももも硬貨は不燃物のうえ、硬貨を傷つけると「貨幣損傷等取締法」という法律に抵触しますので、現代では六紋銭を模した紙を納めることが一般的になっています。紙幣は日本銀行券となりただちに違法とはなりませんが、現金を燃やしてしまうことに抵抗のある人もいますから、避けた方が良いでしょう。
✖ゴルフクラブ・釣り竿・ラケットなどのカーボン製品
カーボン製品は燃えにく、燃え切らない炭素繊維が微細な粒子となって浮遊し、火葬炉の設備に影響を及ぼすことがあります。
✖革靴、革手袋、レザージャケットなど皮革製品
皮革製品は燃えにくいので、燃焼時間に時間がかかることがあります。
✖スイカ、メロンなど水分の多い食べ物
スイカ、メロンなど大きくて水分の多い果物は、燃焼の妨げになります。入れる場合は一口サイズにカットしたものを入れます。紙パックのジュースや酒などもそのまま入れるのは避けます。
✖辞書、辞典、アルバムなど厚みのある書籍類
辞書や百科事典、アルバムなど厚みのあるものは燃焼の妨げになります。入れる場合は分冊化したり、一部のページに限定するなどの工夫をしておきます。
<おすすめの副葬品>
◎故人への手紙
故人へのメッセージを書いた手紙を入れてみてはいかがでしょう。折り紙に書いて鶴や花を折って入れる人もいます。
◎愛用の服
生前好んで来ていた服や
納棺の手順
1.ご遺体の身支度をします。
亡くなった人に白い着物を着せる慣習があります。お遍路さんで着るような和装の白い装束で、通常は葬儀社が用意します。
お遍路さんのときに御朱印をいただいた帷子を着用したり、近親者が縫ったものを着用する慣習のある地域もあります。
2.死装束を身につけます
白い装束を着る場合、襟合わせは通常とは逆の左前に合わせます。上帯(うわおび)を占め、手甲(てっこう)、脚絆(きゃはん)を身に着け、足袋を履かせますが、その際、結び目は「縦結び」といって、結んだ両端が縦になる結び方になります。
地域によっては、死装束の着物を裏返しにして左前にして着付けをする地域もあるそうです。
3.死出の旅に必要なものを入れます
三途の川の渡し賃として、紙でできた六文銭(ろくもんせん)を頭陀袋(ずだぶくろ)に入れて首にかけます。
頭には編み笠を付け、高貴な身分を表す天冠(頭巾)といわれる白い三角の布をつけますが、顔の印象が変わってしまうので編み笠と天冠(頭巾)は棺の中に納めることが多いようです。
4.副葬品を納めて棺の蓋を閉めます
旅支度を終えたら、副葬品を納めて棺の蓋を閉じます。
生前好んでいた服装にしたい場合は、直接着付けるか、死装束の上からかけるケースもあります。
そもそも死装束をつけない宗派(浄土真宗、キリスト教など)であっても、
納棺の際、死化粧といわれるメイクを遺族と一緒に行うこともあります。特別なメイクではなく、ヒゲや産毛を剃り、生前の姿に近いメイクを施しますので、「生きているみたい」とホッとされるケースもしばしば。
ご遺体の変化によっては、ラストメイク等と呼称される特別な技法でのメイクをすることもあります。

学研ココファンのお葬式「ここりえ」
終活・葬儀・お墓アドバイザー 吉川美津子
納棺は故人との距離が最も小さくなるひとときです。できれば立ち合いのうえ、一緒に納棺することができたら良いですね。