御香典を渡す際、一部の地域を除いて、一般的には香典袋(不祝儀袋)の中に金銭を入れておくります。
香典袋はスーパーやコンビニなどで購入することができますが、どのようなタイプの香典袋を選んだら良いのでしょうか。
また「御霊前」「御仏前」「御香典」なんと表書きとして書いたら良いでしょうか。
裏側は下が先、上を重ねて折る
弔事の金封は、不祝儀用専用の金封を使用します。祝儀袋が白と赤で作られているのに対し、不祝儀袋は白と黒になっているので、慶弔を間違える人はまずいないでしょう。
現在の不祝儀袋の多くは「たとう包み」という折り手順でつくられています。
かつては祝儀と不祝儀で折り方を逆にし、祝儀は左から右へ、不祝儀は右から左へと悪用に作られていたこともあったようですが、現代ではいずれも左から右へ開くように作られています。
ただし裏側だけは祝儀と不祝儀で異なり、下を先に折り、上を折り重ねます。
「封包み」も金封を包む際によく使われる折型です。こちらは慶弔で折り方が異なります。
なお、慶事は「喜びは何回重なっても嬉しい」という意味で二重に、弔事は必ず一枚で作ります。
裏側は「たとう包み」と同じように、下を先に折って上を重ねます。
水引の種類
水引は未開封であるという封印の意味や、魔除けの意味、人と人とを結びつけるという意味があり、贈る目的によって結び方や色に約束事があります。
水引の本数は古代中国の五行説に影響し、5本結びが多く使われています。格上になると水引の本数が7本、10本と増えます。
スーパーやコンビニなどで市販されている香典袋は5本、7本の水引が多く、水引が印刷されているものもあります。
金額が5,000円程度なら水引が印刷の香典袋を、それ以上なら紐状の水引が結ばれている香典袋を使用すると良いでしょう。
弔事の場合は、水引は「繰り返さない」「何度も起こってほしくない」という意味で、簡単にほどけない「結び切り」になっています。
色は「白黒」「双白」「双銀」が一般的・京都や北陸地方の一部では、「黄白」の水引を使用することもあります。
キリスト教の葬儀では「水引は使わない」と説明しているサイトもありますが、水引に宗教的な意味はないため、葬送儀礼に限らず日本では広く祝儀・不祝儀の金封や贈り物に使われています。
香典袋の表書き

不祝儀袋の表書きは、厳密には宗教・宗旨・宗派によって異なるのですが、「御霊前」を使用しておけば問題ないという風潮になっています。
仏教の場合、四十九日までは霊がさまよっているので「御霊前」、四十九日後は故人は仏様になるので「御仏前」と書くことが正しいとする説明が戦後に広まったからだと思わますが、仏教ならお香をお供えするという意味で「御香典」がオールマイティに使用できる表書きです。
■仏教
「御香典」「御香料」「御香資」
すべての仏教の各宗旨・宗派、葬送儀礼全般(法要を含む)で使用可能
「御霊前」
仏教の各宗旨・宗派の葬送儀礼のうち、四十九日までの間のみ使用可能(浄土真宗では使用しない)
「御仏前」
すべての仏教の各宗旨・宗派、葬送儀礼等で使用可能
■神道
「御玉串料」「御榊料」「御神前」
神道の葬送儀礼のほか、冠婚葬祭の神事で使用可能。
「御霊前」
神道の葬送儀礼で使用可能
■キリスト教
「御花料」
キリスト教全般の葬送儀礼で使用可能
「御霊前」
カトリックでは日本の慣習として許容。プロテスタントでは教派によって見解が分かれます。
このように、厳密には各宗教、宗旨、宗派によって表書きが変わってきますが、実際の現場では相手の宗教、宗旨、宗派まで事前に把握して参列するケースはそう多くありません。
また表書きが違っているからといって、「失礼だ」と事を荒立てたり、御香典の受け取りを拒んだりする遺族もいません。現実には「御香典」「御霊前」などが無難な表書きとしてよく使われます。
香典の表書きは薄墨が良い?
葬儀で持参する香典の場合、薄墨で書くのがマナーといわれています。これは「涙で墨がにじでしまった」という悲しみや、「あわてて墨をすった」と取り急ぎ準備したことを表現するために、薄墨が良いとされるようになりました。
現代では市販の香典袋の濃墨で印字れていることも多く、また必ずしも薄墨に統一しなければいけないわけではありませんが、覚えておくと良いでしょう。
お金の入れ方
■お札の表裏
香典袋に入れるお札の入れ方や向きなど、厳密には決まっていませんが中には表裏を気にする人みます。
お札は人物が描かれているほうが表、ないほうが裏になります。慶事は正面を表にしますので、弔事は裏にするほうが良いという考え方があります。
■新札は用いない
御香典として使用するお札は、「不幸を予測していた」とならないように、新札は避けた方が良いと言われています。近年はさほど気にする人もいませんが、新札しかない場合は一度折り目をつけるなど配慮が必要、という説もあります。
使い古されたお札といえども、汚れていたり、シワだらけ、破れたお札は失礼なので避けましょう。
連名のルール
御香典は連名にして出すことも可能です。夫婦の場合、夫の名前だけでも夫婦連名でもかまいません。
一般的には右側に夫、左側に妻の名前を書きます。
会社関係の場合は、右から左へ目上(上職)から順に書いていきます。
友人など上下関係がない場合には、五十音順や年齢順など、右側から順番に書いていきます。
<2名連名>
それぞれの氏名を書きます。一般的には右側が上位となります。
<3名連名>
上位の人の氏名を中央に書き、以下左へ順に書きます。近年はバランスを考えて連名全体を中央に配置する書き方も一般的です。
<4名以上>
表書きには「○○有志」「○○一同」のようにグループをあらわす名称を入れます。代表者名を各場合は「他一同」「他○名」としても大丈夫です。
連名に場合、あとで家族が香典を整理しやすくするために、別紙にそれぞれの氏名と住所を書いて一緒に同封すると良いでしょう。
住所・金額をの書き方
香典の裏側には住所(郵便番号も忘れずに)と氏名(フルネーム)で入れます。金額を漢数字で書くときは壱(一)、弐(二)、参(三)、拾(十)、仟(千)、萬(万)というように大字(だいじ)という表記が好ましいと言われています。
これは線を付け足すことで他の漢数字になってしまい誤解が生じてしまうためですが、算用数字で書く欄がある金封も多いため、厳密ではなくなっています。
お香典の金額
お香典として入れる金額は、実は何十年も変わっていません。
友人・知人であればだいたい5,000円~10,000円程度が多いようです。
香典辞退の場合
近年は遺族がみずから香典を辞退するケースもあります。香典に頼らず予算内で葬儀を考える人が増えたことや、香典返しの負担を減らしたいといったことが理由にあげられます。地域差もありますが、特に関西地方に多く、中には約8割は辞退するという地域も…。
「香典を辞退する」という場合は、基本的に持参しません。受付で差し出しても丁重にお断りされることが多いようです。

学研ココファンのお葬式「ここりえ」
終活・葬儀・お墓アドバイザー 吉川美津子
「御霊前」「御仏前」「御香典」「お花料」など、表書きは数種類あります。先方の宗教を把握して参列できるとは限りませんので、実際の現場では厳密でなくても大丈夫です。氏名や住所など、わかりやすく丁寧に書くことが大切です。