おひとり様の終活支援
今年は「身元保証」「日常生活サポート」「死後事務」をセットにした「高齢者終身サポート事業」のニュースをよく目にします。
背景には、病院への入院や介護施設等への入所の際の手続き支援、日用品の買い物など日常生活の支援、葬儀や死後の財産処分などの死後事務について、家族や親族にかわって支援する民間の事業者が増えてきたこと。しかし、監督省庁がないため、その実態はかなり脆弱で、預託金の保全についてもあいまいな事業者もあります。
2024年6月には、内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)から、高齢者等終身サポート事業者ガイドラインが出され、健全化に向けて動きだしました。
近年は以下のように公的な支援に取り組む自治体も少しずつですが増えています。
(以下、東京新聞2024年10月11日)
いざという時に頼れる人がいない高齢者の身元保証や葬儀・納骨など死後の支援に、自治体が本年度から本格的に取り組むことになった。親類などとも疎遠な「身寄りなき人」は増え、引き取り手のない遺骨は全国で増加。厚生労働省は、葬儀や死後の財産処分などを行う事業者が守る事項などを定めたガイドラインを策定し、自治体による「終活」支援の課題を検証するモデル事業を始めた。(五十住和樹)
モデル事業は愛知県大府市、岡崎市や川崎市など9市町が実施(予定も含む)。包括的な相談・調整窓口の整備か、(1)身元保証の代替支援(2)介護保険サービスの手続き代行など日常生活支援(3)葬儀・納骨など死後の支援-を、パッケージで提供する。
川崎市で社会福祉協議会が行う「未来あんしんサポート事業」は、希望に沿った葬儀・埋葬や遺言の作成と執行、月に1回電話をかけ、半年に1回訪問するなどの定期確認サービスが柱。「死後、周囲に迷惑をかけたくない」と相談に来る人が多いといい、16人が契約している。ただ、遺言執行や葬儀・埋葬費などにかかる60万円の預託金や入会金、年会費も必要。市は「低所得者が使いづらいのは課題だ」と認める。
総務省が昨年8月に公表した調査報告によると、民間事業者の83・8%がモデル事業の(1)~(3)を提供。プランは多様だが利用開始時に少なくとも100万円以上が必要といい、「収入・資産がなければ利用は困難」と分析。同市のモデル事業は、比較すればやや安価とも言える。
特に自分の死後については、自分以外の誰かに託さなければ、役所への手続きができないだけではなく、各種支払いもできず、さらに自分自身を葬ることもできません。墓地へはひとりで歩いていけないのです。
「託す」相手を見誤ってしまうと、金銭的な損害だけではなく、「葬る」「弔う」行為すら損なわれてしまう可能性があります。
預託金を預かった葬儀社が倒産?!
自治体のサービスは、あらかじめ葬儀社へ預託金を預けておくというシステムが多いのですが、そこには預けておいた葬儀社が倒産してしまうリスクが潜んでいますが、預託金の保全に向けては、現在のところ整備されていない様子。
また、契約期間が長期にわたるため、5年後、10年後にそもそもその契約が時代に合っているのかわからない、という点にも課題が残ります。
高齢者の単身世帯の増加、生涯未婚率の上昇といった社会構造を背景に、しばらく「高齢者等終身サポート事業」の話題は続きそうです。
学研ココファンのお葬式「ここりえ」
終活・葬儀・お墓アドバイザー、社会福祉士
吉川美津子
現代の日本では、「何も残さず逝く」というのは難しいのが現状です。
死後の事務処理は自分以外の誰かに託さなければいけません。
おひとり様をサポートする仕組みはまだ発展途上です。